閉店

独立して事務所を始めてから3年目くらいだっただろうか、仕事がなかった時に本屋さんの店作りに関わらせていただいた。1階のテナントで交通量の多い場所だった。本は仕事柄慣れ親しんでいたし、本に対する思いもそこそこ持っていた。そのため「本屋はこうあるべきだ!本はこんな本をぜひ置いてほしい!」なんて若輩者で素人だった私は、少しの知識と大きな夢を伝えて設計させてもらった。出版業界の問題や流通の問題など、現実的なことはまったくわからなかったのに。それは今でも本当のところはわかっていないけど・・
でもそんな私の意見を少しでも生かそうとしてくれて、お店はなかなか雰囲気のある本屋となった。店主の趣味でもある車の本を主体として,これはぜひ読んでほしいという店主おすすめの本や私たちのような変わり者が読む本など、許せる範囲で普通の本屋では見かけない本が並べられていた。それからというものは暇にまかせてお店に通いつめ、世間話や車のことなど深夜遅くまでいろいろな話をしていたことも。
そんなある時、無理をして初めて買った外車を事故でつぶしてしまい、「そうか・・D車は似合わないと思ってた。どお!今度はF車に乗ったら・・・」と薦めてもらった。そして中古車情報で探し当てた車をとうとう買いに行くこととなり、積載車をレンタカーで借りて二人で神奈川県の厚木まで。運転はすべて店主さんが。
中古車屋さんに到着した時に目当ての車はあったものの、試乗した後で「あれはやめといたほうがいい」と店主の言葉。そしてあたりの車を見回したいると、店主がしつこいくらいに見ている車があった。「これにしたほううがいい!」
あっそう〜??
係の人に試乗させてほしいと頼んだところ、めずらしいことにエンジンがかからない。お店の人が慌ててあれこれしていてもやはりエンジンはかからず、とうとう「だめですね。どうしますか?」と聞かれた。
そこで店主が「かからないならいいけど、いくらまでにしてくれる?」と。
えっ!え〜〜〜???
結局店の人も即断できず、昼ご飯を食べてくるので金額を決めてもらうことに。
どうしてぇ〜〜???
訳の分からないまま近くのレストランへ。
店主の見立てでは「エンジンはかからないかもしれないけどあれはものがいい!」
「大垣のMのところに持っていけば何とかなる」
「いくらだったら買うかだけど、○○万円までなら買おう!まぁそれ以上だったらあきらめよう」などなど。
半信半疑であった自分はもう店主の言葉を信じるだけ。
昼食を食べ終わって中古車屋さんへ行き「どうですか?」と訪ねると、お店の人が妙にあらたまった顔で話し始め「エンジン動かないんで△△万円でどうでしょうか?」
えっ!え〜〜〜!!!!!
驚いたことに想像していたよりもはるかに安かった。店主も私も笑い出しそうなところをぐっとこらえて「そうですかぁ・・」とためらいながら「もうそれ以上は下がりませんよね」と一言。答えは当然「無理ですね。これ以上は・・」
喜ぶ気持ちを抑えてすぐにお金を払い、動かない車を積載車に乗せてもらってすぐさま失礼しました。
どうやら店主のことを業界の人と思ったようで、かなりシビアな金額を提示してくれたようです。途中サービスエリアで休憩している時に、荷台の車を見上げては「あぁ〜ほんとに買ってきたんだ」とため息まじりで見ていました。
大垣のMさんの所についたのは午後6時をまわっていました。「じゃよろしく!」いきなり来ていきなり置いていった車はMさんの手にかかり、店主のいっていたように見事に復活しました。そして6年間、杉の子マークとの楽しいカーライフを過ごしました。
そんな思い出を作ってくれた店主さんが昨年秋に突然亡くなられました。そして今日、奥さんから店じまいの案内が届きました。本当に残念で仕方がありません。いろいろとお世話になりながら十分なお礼もできませんでした。
でも店主さんと話したことや思い出はいつまでも忘れません。本当にありがとうございました。
そして、長い間ご苦労様でした。

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