スティーブ・ジョブズ

 私がはじめてコンピューターを使ったのは、勤め始めた設計事務所で日影図を描く作業でした。その頃は、ホストコンピューターがNTTにあって、事務所には入力端末だけがあり、データーを電話回線で送っては、出力結果をわざわざNTTまで取りに行かなくてはなりませんでした。データーを入力するには、マニュアルを横目に機械言語を使って、紙のテープにパンチングしてから、機械に読み込ませるやり方でした。入力ミスがあると、はじめからパンチングを何度もやり直し、やっとできたデーターを送って出力を見たら、思うような結果になっていなくて、またはじめから入力をやり直さなければなりませんでした。そのため、休日まで事務所に行って、訳の分からない言語を、ぱちぱちと紙に穴をあける日々が続いていました。
 それから、10年あまりが過ぎた頃、かわいらしい箱に小さなモニターが付いていて、ボタンを押すとボォ〜〜ンという響きと共に、にっこり笑ったアイコンが飛び出してきました。それはじつに衝撃的でした。見ればカラフルなリンゴが少しばかりかじられたマークが付いていました。それが最初に出会ったMacでした。完全に一目惚れです。「コンピューターってこんなにいいものなの!」私の食わず嫌いはいっぺんに吹き飛び、高嶺の花だったリンゴをいつか私も食べてみたいと思い続けていました。
 そして、5年ほど経ったある年、手書きで図面を描いていると、三角スケールの1/50の目盛りが見づらくなってきました。「このまま、手書きで図面を描き続けられるんだろうか」そんな思いもあって、はじめてパソコンを購入することにしました。それが私がはじめてリンゴをかじった時でした。以来、ずっとMacを使い続け、身も心もアップル信者となっています。私がコンピューターを使い続けることが出来たのは、この世にMacがあったからでした。
 昨日、そのMacの創始者の一人、スティーブ・ジョブズ氏の訃報を知りました。アップルのサイトには、そのスティーブ・ジョブズ氏の遺影が写し出されています。心からご冥福を祈るとともに、私の人生を豊かにしてくれたスティーブ・ジョブズ氏に心から感謝致します。

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